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スイーツ、軽食、雑貨まで全てがガチ台湾の「美豆花(メイドーファー)」
浅草・雷門から徒歩6分、国内外の観光客でごったがえす浅草の喧噪(けんそう)からほどよく離れた絶好のロケーションに建つ有名老舗が「駒形どぜう」である。1801年創業の江戸風情漂う店構えの隣には40年来の歴史を持つ昭和レトロな喫茶店があり、ご近所の常連が集う街の日常の一部となっていた。
このたびその喫茶店が看板を下ろし、台湾茶房「美豆花(メイドーファー)」として生まれ変わった。店主の富吉美奈は浅草橋の人気店「家豆花(ジャードーファ)」の店主の妹で、この2軒は文字通りの姉妹店だ。
そもそも家豆花は、祖父の代から東京に暮らす台湾人ファミリーが自宅近くに開いた店。出身地である台湾南部・屏東(ピントン)の家庭料理の味とのどかな雰囲気をそのまま味わえると、多くの客を引きつけている。家庭料理といっても、豆花を原材料の豆乳をこさえるところから当たり前に始める徹底ぶりで、凡百の類似店のレベルを軽く上回っている。
美豆花はランチタイムと15時以降のティータイムの2回、客の波があり、ランチタイムは近隣の会社員でごった返す。「家豆花でランチしたかったけれど会社から微妙に遠くて行けなかった」と、新店を歓迎する声や、在留台湾人も多く訪れる。地元に根ざした本物の味の証といえるだろう。
富吉が友人の土屋由有子とコンビを組んで供する台湾スイーツと軽食のレシピは基本的に家豆花と同じ。2025年8月27日に開店したばかりということもあり、現時点ではメニュー数を少し絞り込んでいる。
例えば、蔥油餅(ツォンヨゥピン)は扱っていない。一方でバージョンアップした新メニューもある。その一つが人気のボリューミーな「滿セット」(1,600円、以下全て税込み)。「滷肉飯(台湾式豚肉ぶっかけ飯)」か「雞肉飯(台湾式鶏飯)」、大根スープ、「総合豆花(豆花のトッピング全種盛り)」か「愛玉(オーギョーチーのゼリー)」。セットは5種類あり、いずれも100円追加すれば滷肉飯と雞肉飯の合い掛けができる。家豆花の常連さんの要望で生まれた趣向で、「美豆花」のみで提供される。
飲み物は台湾茶ももちろん味わえるが、推しているのは台湾の上質な「阿里山紅茶」(700円)。台湾紅茶は近年品質が向上しており、未経験なら試してみる価値は大いにある。独特のまろやかな甘みがあり、2煎(せん)ほど味わえる。世界的に評価の高い、知る人ぞ知る台湾ウイスキー「KAVALAN」のハイボール(700円)も置いている。軽い昼飲みにちょうどいいだろう。
同店は、近所の縁で喫茶店だった建物を居抜きで借り受けることになったのが5月のこと。家豆花ファミリーが集結して内装を自分たちで行い、台湾を行き来して新しい家具や備品、食材を買い揃え、2カ月強で店に仕立て上げた。圧倒的なチームワークである。
40年間喫茶店として使われた店内は、壁や天井にたばこのヤニの皮膜ができて、それを取り除くのが一番の難問だったという。一月かけて臭いを除去、皮膜を洗い落とした。白い天井が茶褐色がかっているはその痕跡だ。
かつての痕跡はほかにもある。コップや食器を納めたガラス戸棚だ。以前からあった物をそのまま利用したそうだが、しっくり溶け込んでいる。
壁面の下部をぐるりと取り囲む台湾のエメラルドグリーンの壁は「家豆花」ゆずりのカラーで、台湾の古民家の定番色。また天井には提灯(ちょうちん)とともに味のある編み物の手作りオブジェが吊り下げられている。
席数は22席。夜市などの露店で見かけるステンレスの4人掛けテーブル席と手作り感のある「おひとり様テーブル席」が2つある。元海鮮丼のテイクアウト専門店だった家豆花より、喫茶店だったこの店の方が空間はゆったりしている。
美豆花は東京の下町と台湾の田舎町、2つのレトロな風合いが境なく混ざり合い、家豆花とはまた違ったテイストの空間で居心地の良さを醸し出している。
ご近所の縁で、どじょう鍋の締めに隣の豆花にハシゴする、なんて使い方も楽しそうだ。小粋な味の日台文化交流に、新たな食の可能性を感じてみては。
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