勅使川原三郎(Photo:Kisa Toyoshima)
勅使川原三郎(Photo:Kisa Toyoshima)
勅使川原三郎(Photo:Kisa Toyoshima)

アーティストが場を持つということ

舞台芸術家が語る「創作」と「空間」の関係と、都内の劇的空間10選

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タイムアウト東京 > アート&カルチャー > アーティストが場を持つということ

テキスト:高橋彩子(舞踊・演劇ライター)
 

観る者を引きつけてやまない舞台芸術の世界。目の前で躍動する身体や発せられた声、言葉もさることながら、上演される場所もまた、観劇には大きく作用する。そうした空間をアーティスト自らが作り提供する場合、観客は創作に深く結びついた時空間を体験することになるだろう。今回はそんなスペースを紹介しよう。

創作に立ち会う黒の空間 〜KARAS APPARATUS〜

「時間や空間の使い方に制限なく作業できるところが、劇場とは違います。かといって彫刻家なり画家なりが使うアトリエとも違う。観客に、創作現場で起きていることに立ち会ってもらえる場所です」と、舞踊家の勅使川原三郎は、自身が率いるKARASの創作スペース「KARAS APPARATUS(カラス アパラタス)」について語る。荻窪駅から徒歩3分、風情ある商店街の一番奥に位置する、1階、地下1階、地下2階の3フロアからなるスペースだ。

「以前の稽古場は亀戸にあり、そこでの稽古後、劇場に入っていたのですが、劇場と稽古場の次元が違うような気がしていて。劇場での公演は、山で言うなら山頂。人目につく場所でプレゼンテーションすることです。もちろん、そこからまた変化し続けるので、決してそれがゴールというわけではないのですが。一方、稽古場での作業は隠れていてほとんど見えない。でも、その間、いわばプロセスこそ、最もクリエイティブなんです。そうしたものを見てもらえる場がほしいと思いました」。

勅使川原がその思いをカンパニーのメンバー佐東利穂子に話した翌日、佐東が物件を発見。全面的に改装し、2013年7月にオープンした。ワークショップや映像上映会など、使用は多岐にわたるが、なかでも『アップデイトダンス』と銘打ったパフォーマンスシリーズは評判を呼んでいる。小空間ゆえ至近距離でダンスが観られる贅沢に加え、平日は夜20時開演と社会人に通い易い時間設定や、前売2,500円、当日3,000円という価格設定、ダンスには珍しい1週間超の公演期間も人気の理由だ。